2011年10月16日

繁殖期の紋別のエゾ鹿の行動。

 1.メデタイ鹿とデメキン鹿。
紋別スクールはメデタイ(目出鯛)鹿やデメキン(もっと目が出ている魚=もっとメデタイ)鹿が多い所です。今や北海道の鹿が増えてハンターにとっては良い事と言えますが、一方で1年中駆除に曝された鹿は高度な学習をしており、通常のハンターを寄せ付けません。

ただ全ての鹿が駆除を受けている訳ではありません。そう言う駆除慣れした鹿は牧草地周辺や林道周辺の鹿に限られ、深い山奥の鹿は殆ど駆除を受けておりません。そう言う鹿と対戦するには山奥まで行かなくてはならないのかと言うと特定条件を満たせばそうでもありません。

山奥=高度が高い=積雪が早い。高い山に積雪があると全ての鹿ではありませんが1部の鹿は山を降りて来ます。もう一つのパターンで秋の10月中下旬からの約1カ月は鹿の繁殖シーズンです。メスの群れが山を降りればオス達もこれに続いて降りて来ます。

 2.紋別スクールの魅力はメデタイ大物鹿やデメキン大物鹿。
紋別スクールはこの条件を満たしている場所にあり、余り駆除の圧力を受けていない、或いは全く受けていない山育ちの鹿も多少います。これがメデタイ鹿やデメキン鹿なのです。メデタイ鹿やデメキン鹿の多くは若い小物ですが大物も少し居ます。

通常は大物ほど狩猟経験を積んでおり照準時間を与えてくれず、取り仕切る場所が広い為に広い場所に出現します=射程距離が長く(150m前後)なり、撃たれ強い為により正確に急所にヒットさせなくてはなりません。

これらの理由により、普通の大物は経験の少ない生徒が精度のやや劣るサボットスラグ銃で限界近い射程距離で勝負するにはハードルが高過ぎます。
これに勝負するには5~10年の経験とライフル銃の両方が必要になります。

しかしこれがメデタイ大物になりますと話は大きく変わります。特に70cm級大物の場合は100m以内の距離で多少長目の照準時間を許します。もちろんこのクラスとて狩猟経験がゼロではありませんから決して舐めて掛かれません。

まずは射手の「肝」がその大物に耐えられなければなりません。(5~10回の大物失敗の経験が必要)その上で地元ハンターの平均値より速い時間で撃てればと言う前提が付きます。
つまり本来必要な経験量の少なくとも30%以上が必要と言う事になりますが、この差は大きく狩猟経験のないサボットスラグ生徒でも3年目(通算12日)を超えた頃には達成出来る可能性が十分あります。

対戦相手がメデタイ80cm級超大物に変わっても条件はほぼ同じですから射手の「肝」さえ耐えられれば充分可能性はあります。「肝」はそのクラスとの対戦を5~10回経験すれば育ちますが、相手が超大物になりますと出会い回数が極端に少な目になり、達成は8年(通算30日)前後の頃になります。

デメキンの大物や超大物に変わりますとまた話も大幅に変わって来ます。射程距離も一段と近くなり50m強、そして照準時間はゆっくりじっくり狙っても大丈夫です。
対戦相手がデメキンかどうかは普通の人には分かりませんが講師には分かりますから「デメキン、ゆっくり狙え」の指示があります。

このアドバイスの声が聞こえないほど舞い上がっていたり、急所に銃を向ける事すら忘れてしまうほど舞い上がっていない限りこのデメキン大物や超大物はまず捕獲に成功します。
狩猟経験ゼロ、実戦初日の第1弾で角長72cmの大物を倒した生徒もいる程ですが、流石にこれは例外、通常は小物クラスだけでも5~10頭撃墜の経験があればまず大丈夫です。

紋別スクールはこの様な場所で鹿が山を降りてくる季節であり繁殖である10月中旬から繁殖期が終わる頃であり積雪が多くなり過ぎるまでの11月下旬までの1カ月強の間にだけオープンされます。北海道にこの様な優れた場所は紋別スクールだけとは申しませんが、それほど多くはありません。紋別スクールの猟場は通常の猟場より出会い総数も大物捕獲の可能性もかなり恵まれており、これが最大の魅力です。

紋別の猟場の多くはスクール専用猟場ではありません。一般の方も地元のハンターも使っていますが、鹿の動きが彼らには分かっていない為に実質専用猟場と化しています。
ではどの様にしてメデタイ大物との高出会いを得ているのか、それをお話しましょう。
まずは鹿の群れの構造に付いてです。

 3.鹿の群れの構造と行動の特徴。
鹿の群れは5~6頭のメスの群れが基本です。オスはこの時期にはまだ群れを作りません。
元々オスメスはほぼ同率です。ゼロ歳のオス(角無し)はメスの群れに付いていますからここで言うオスとは角のあるオスと言う事になり、メスの中にはゼロ歳のオスも含まれます。
メス5~6頭の群れは同族の親子兄弟がメインです。

メス5~6頭の群れの周囲にはオス4~5頭が付いています。雌が発情しますと雄は交尾しようとしますが、より強いオスがそうはさせじと横槍を入れて来ます。すると戦いが起こる事もありますが、まもなく順位が決定されます。

メスの群れが大きいあるいは5~6頭ユニットが複数の場合はオスもたくさん集まります。
当紋別に於いても似た様なサイズの6頭前後の大物鹿が100m前後の等間隔で円を描く様に並んで順位争いの睨み合いをしているのを稀に見掛けます。

メスの群れにはボスと呼ばれる角長75cm~80cmのNO.1のオスが付きます。
メスの群れがおめでたければNO.1ボスも朝の合法時間に会えますが、通常は余り会えません。共に時間外の可能性が高いと思います。しかし朝夕が暗い日には可能性がありますから、そう言う天候の時にそう言う場所に行けば射程距離150m前後でNO.1に出会えます。

面白いのはこの後です。群れとNO.1が引き揚げると間もなくその近くの広い見晴らしの良い牧草地の丘の中央でNO.2が「我ここにあり」とアピールする為に5~10分程度ですが仁王立ちをします。実はこの仁王立ちをするのは全てメデタイ鹿です。
NO.2との出会いは合法タイムすれすれ、朝夕が暗い時は30分の余裕がある日もあります。

NO.2は通常は5~6歳の70cm級大物です。地形から多くは射程距離が100m強、サボットスラグ銃にとってやや難しい距離になりますが、不可能ではありません。
NO.2が引き揚げると今度はNO.3がその近くのやや小さな場所で同じ様に「我ここにあり」をアピールします。これは完全に合法タイムでこのクラスから捕獲数が多くなります。

NO.3は4歳前後の60cm級です。射程距離は70~80mですからスラグでは難しい距離でもサボットスラグならあまり問題のない距離です。
NO.3の後にはNO.4がやはり同様に行いますが、これは3歳の3段角になったばかりの鹿やカニ角クラスで距離も50m前後になりますから通常スラグやフルチョーク+バックショットの可能性も出て来ます。

夕方にはこの反対の順番で14時前後から同様のショーが行われます。
翌日は何もなければ隣接の2km以内でそれほど変わらない時間に同じ様なショータイムがあります。

 4.撃たれた群れの行動。
撃たれますともう少し離れた場所と時間を変えて(全般的には1~2回目は朝早く夕方遅い方向の時間、3~4回目はその反対側で日中真昼間に意標を突いて出て来ます) ショーが行われます。最大4回はこの考えで出会う事が出来ますが、出会い回数も内容も日々低下の方向にあります。この様に出る場所や時間を予測してそのポイントに直行しますのでこの狩猟方法を「ポイント猟」と名を付けました。

 5.天候サイクル。
この減少一途の流れが変わる日がやがて来ます。それは天候サイクルの雨や雪の日です。特に雪には鹿は敏感に反応します。天候悪化の前日には嘘の様によく鹿が出てNO.2や上手く行けばNO.1にすら出会える可能性が出て来ます。当然こんな日にはその様な場所にその様な時間帯に出向きます。

天候が荒れても雨や雪が少なければ出会いは多くありますが、本当に大荒れになりますと出会いはパッタリ止まります。
雨や雪が収まって数時間するとまた山から新しい群れが降りて来ます。新しく降りて来る場所はほぼ地形によって決まっていますからその様な場所にその様な時間に行けば鹿に出会えます。

その鹿の移動再開が日中の場合は林道がお奨めコースになります。夕方のショーに向けてそれぞれの場所に移動しますからその手前の林道で会えるのです。
こうした5日前後サイクルが紋別の猟場では毎年4~5回繰り返されます。

 6.月齢との関係。
この天候サイクル以外にも考慮しておきたい項目があります。それは夜間の月明かりです。
鹿は完全な夜行性ではありませんから闇夜の日にはあまり行動しません。
夜の前半に月が出ない場合には夕方早くに鹿が出ますから出会いが増えます。反対に明け方には早く引き上げますから出会いは減少します。

夕方に月が出る場合は完全な夜になって月明かりが十分になってから鹿が行動しますから出会いは減少します。この時の夜半から明け方に月が無く鹿は行動しませんが、明け方の太陽の薄明かりで牧草地に出て来る鹿の群れもおり、これとは合法タイムに出会い易くなり出会いは増えます。

 7.これらと横着け猟の総合組み合わせがスクールの狩猟法。
この様に当日の天候だけではなく前日の天候やその夜間の天候や更には1週間前からの天候、月の位置関係、何処で出会った、何処で撃った等々を総合的に考えて当日の作戦は立案されるのです。

その上で「ポイント猟」以外にも「追跡猟」「デート猟」「スイング射法」「待ってたホイ猟」「迷アプローチ猟」 「錯覚猟」 「アンビリ猟」 「シミュレーション猟」 等があり、これらの総合的な組み合わせが横着け猟になります。

各内容に付きましてはすぐ下にありますが、横着け猟の項目も参照して下さい。
                   http://huntingschool.militaryblog.jp/e263250.html

根室の鹿の行動はこちらを参照して下さい。 http://ameblo.jp/little-ken/





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Posted by little-ken  at 10:47 │狩猟ロマン