2011年12月10日

エゾ鹿猟には魔物が存在する。

狩猟は男の本能を揺さぶる大きな魅力のあるスポーツですが、その中でもエゾ鹿猟には又別格の魅力があります。

日本鹿の中では群を抜いて大きく且つ食べて美味しいのも魅力ですが、それだけでは無く特に対大物戦には何か魔物が潜んでいる様な気がします。
エゾ鹿はスコープを通して対戦するとそのド迫力が良く分かります。
本州鹿より2倍位大きい事から迫力も2倍程度位は頭に浮かぶと思いますが、実はそんな程度ではないのです。


成功率たった13%の大物戦:(超大物戦は成功率0%)
2011年度の紋別スクールでは平均値では実戦経験4年程度スコア10頭程度のスコアの生徒達が角長70cm以上の大物エゾ鹿を7頭捕獲しました。
僅か3.5日程度の滞在の中で大物が捕獲出来る事自体素晴らしい事なのですが、実は出会いは更に3倍以上あったのです。

何と生徒の合計で23回も失中し、12回も未回収を出しています。もちろんその殆んどは大物或いは捕獲には成功しませんでしたが何割かは角長80cmクラスの超大物です。
つまり合計で僅か16日の実戦中に大物7頭を捕獲し他に35回もミスをしているのです。

毎日2.6回も大物と勝負(小物も含めれば勝負回数は5.69回/日)出来る事も凄い事なのですが、それは単に北海道が優れた猟場であり、その素晴らしさが世界ダントツを示しているデータに過ぎません。

エゾ鹿猟の魔物とはかなりの経験を積んでも何故か捕獲には成功出来ない事です。
例としましてすでに3年で10頭も倒している多くの生徒達ですが出会った大物の中で捕獲に成功したのはたった17%でした。(超大物に対しては成功率0%)

なぜ残りの83%はミスってしまうのか、実はエゾ鹿の大物戦には対戦した事のある人しか分からないド迫力があり、この陰に魔物が存在するのです。

3年よりもっともっとたくさんの経験を積んでいる生徒達を持ってしてもこの数値はあまり変わらず、魔物には中々勝てずにもがいているのが現状です。

栃木からのある生徒の場合、実戦経験40年弱スコアは130頭程度で北海道歴がその半分弱位です。その彼を持ってしても角長70cmの大物までは迫力負けせずに対戦できるのですが、角長80cmの超大物になるとコテンパンと言う感じで連続負けしてしまいます。

彼は私のスクールに通って8年になり、ここに来たのもその超大物との対戦が目的です。
もちろん彼の目標は我がスクール以前もそう言う超大物との対戦ですが、北海道複数の他の地域の約10年ではその出会いが少な過ぎて話にならず、私のホームページを見て対大物戦に憧れて我がスクールに移って来ました。

そして8年間で正味35日の実戦の間に超大物とは10数回対戦してやっと念願の角長81cmを捕獲する事が出来ました。


もう1人、神奈川からの生徒は実戦歴15年強、スコアは50頭強です。彼は6年で29日の実戦をスクールで体験しこの間に40頭強を倒しました。70cm級大物のハードルはすでに5年前にクリアしており、超大物との対戦もそろそろ10回に近くなっているのですが、まだもう少し時間が必要な様です。

対大物や超大物戦とて一般の獲物に比べて特別の問題は何もありません。距離も150m程度、ただデカイだけなのです。ところが何故か弾は何時もの様に命中しなく、失中もしくは未回収になってしまう事が多いのです。そしてそうならない様に慎重が過ぎますと撃つ前に逃げられてしまうのです。

デカイ事で撃つ側がやや不利になる唯一の点としましてはより正確に急所を撃たないと未回収になり易い事だけです。実際心臓を撃ちますとちゃんと命中しても200m以上走ります。そして超大物の場合は弾が貫通しない事が多く出血痕を追跡すると言う事も難しくなります。


講師でもまだ勝てたとは言えない超大物戦
これがエゾ鹿の大物戦の現状です。物凄いド迫力に負けてしまうのです。
傍から見れば単に対戦相手が多少デカイだけ、なのに成功率が10%台なのです。
筆者の経験は約30年でスコアは1000頭を超えていますが、その私でもまだこの魔物に完全に勝ったとは言えません。

2011年度のデータでは15日間に12頭の大物&超大物を捕獲していますが、ミスした方は16回もあります。成功率はまだ43%、失敗率の方が多く57%です
これではまだ余り負けなくなった程度で勝てる様になったと言うには程遠いデータです。

下記写真の様に連続で上手く行く時もありますのでかなり進歩したとは思いますが、そうでない反対の時もあり総合的にはまだ失敗の方が多いのです。
エゾ鹿猟には魔物が存在する。エゾ鹿猟には魔物が存在する。
2011.11.15. 大物トリプル捕獲79cm、79cm、75cm、 11.19. 大物ダブル捕獲72cm、77cm

対戦相手が少し大きいだけでなぜこうなるのか、魔物がいるとしか言い様がありません。
超大物でも平静に射撃が出来る様になるその日が来るまで負けが続きます。
何時の日にかこれに勝つ事を夢見てまたトレーニングを積むのです。人間的にも大きく成長します。これがエゾ鹿猟のロマンなのです。

先の経験15年スコア50頭の生徒の言葉を借りれば、こう言う風に言っています。
「こんなにも単純だと思える事がこんなにも難しく、且つまたこんなにも楽しいのがエゾシカ猟」

エゾ鹿猟のロマンは永遠に不滅ですね。
講師も何時の日にか全勝出来る日を夢見てトレーニングに励んでいます。




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Posted by little-ken  at 14:53 │狩猟ロマン